梅毒とHIV(エイズ)の重複感染に注意!その特徴と関係性について

梅毒とエイズの血液検査

「梅毒とHIVは重複感染しやすい」ということを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
梅毒とHIV感染症は同時に感染している可能性が高く、それによってさまざまな影響が発生する注意しなければならない性感染症です。

ここでは、梅毒とHIV感染症がなぜ重複感染しやすいのか、また、重複感染することによってどのような影響を及ぼすのかを見ていきます。

なぜ重複感染しやすいのか?

エイズ治療・研究開発センター(ACC)の調べによるとHIV感染者の約60%以上が梅毒に感染しているという結果が出ているほど感染率が高くなっています。

なぜこの2つの性感染症が重複感染しやすいのでしょうか。

HIVと梅毒の重複感染については、まだ医学的根拠は発見されていませんが、この2つは感染経路が非常に似通っているため、重複感染のリスクが高くなっているのではないかという説が有力なようです。

最も多いのは「性行為」による感染

梅毒とHIVは性行為を行うことで感染する確率が非常に高い性感染症です。

梅毒は、感染者の血液や性分泌液が皮膚や粘膜、小さな傷などに触れることで感染を広げます。もし感染者の口内に梅毒の病変があった場合、激しいキスなどでも感染の恐れがあります。

HIV感染症は血液感染、性交渉による感染、母子感染などから感染が広がります。母子感染は、妊娠や出産によるもので、血液感染は輸血や注射針の使い回しが感染経路となりますが、その中でも特に感染リスクが高いのが性交による感染拡大です。

HIVは感染者の体液や血液を媒介して、粘膜や傷口を経由して感染を広げます。そのため、粘膜が接触しやすい性行為による感染確率が非常に高いのです。

日常生活では感染しない

ただし、HIVは非常に弱いウイルスで水や空気に触れることで感染力が無くなります。そのため、体液といっても、唾液や汗、涙といった分泌液からは感染せず、通常の日常生活での行動が感染ルートとして感染することはないとされています。

このように、2つの性感染症の感染経路には

  • 性行為によって感染する
  • 粘膜を介して感染が広がる
  • 性分泌液や血液を介する

といったように多くの共通点があるため、重複感染のリスクが高い傾向にあるといわれています。

梅毒とHIVとはどんな病気なのか

重複感染のリスクが高い梅毒とHIV感染症ですが、その症状や治療方法は全く異なります。梅毒、HIVそれぞれのウインドーピリオドや検査方法、症状などをチェックしてみましょう。

梅毒とHIVの対比

2つの性感染症の基本的な概要です。以下の表を参考にしてみてください。

梅毒とHIVの対比表
※1 HIV感染からエイズ発症までの期間が短くなってきているといわれており、今後の動向に注意が必要です。
出典:http://api-net.jfap.or.jp/library/alliedEnt/04/pdf/kisochishiki.pdf

※2 潜伏期間やウインドーピリオドは個人差があります。検査自体は、内容によって約1カ月で検査可能になるものもありますが、正しく検査結果を知るためにも、感染が疑われた日から3カ月目以降の検査をオススメします。

梅毒とHIVには違いがいろいろあります。気になるポイントを詳しく見ていきましょう。

ウインドーピリオドで見る2つの適切な検査時期

性感染症に分類されるほとんど病気にウインドーピリオドと呼ばれる期間があり、この期間を過ぎないと
正しい検査結果が出ないとされています。

ウインドーピリオドの違いの捉え方

梅毒とHIVにもそれぞれウインドーピリオドが存在しますが、その期間が違います。表を見てみると、梅毒の方が検査可能となる時期が早くなっています。
そのため、梅毒のウインドーピリオドだけを参考にして性感染症検査(血液検査)を行うと、検査項目にHIVが含まれていたとしても、HIVについては正しい検査結果が出ない場合があります。

梅毒とHIVの検査は感染から3カ月後を目安に進める医療機関も存在します。そうすることで、HIVの結果も正しく得られ重複感染に早く気付けるからです。
しかし、もし梅毒に感染していたら3カ月も放置しておくのは心配ですし、不安を抱えたまま数カ月も過ごすのはストレスになるかもしれません。

梅毒が陽性反応の場合にHIVの検査を!

医療機関では、梅毒の陽性反応が出た陽性者に対して、適切な時期にHIV検査も一緒に検査するように勧めるケースが増えています。ウインドーピリオドにこだわり過ぎて適切な検査時期を逃してしまうよりは、不安や心配に思う場合には、すぐに病院に行き、そこから改めて検査日を検討することをお勧めします。

梅毒とHIVの「再発の可能性」

さらに、何といっても大きく異なるのが再発の可能性についてです。

梅毒の場合

梅毒は、第1期・第2期と呼ばれる早期梅毒の内に適切な治療を行った場合、完治させることが可能です。

よく梅毒の治療をしていたのに再発した、という話を聞きますが梅毒の独特な症状を勘違いしていることが多いです。梅毒は進行していく間に何回かの潜伏期間(無症候期間)が存在します。この潜伏期間を完治したと勘違いしてしまうと、「治ったのに症状がまた出た」と思う原因になります。

HIV感染症の場合

HIVは一度感染してしまうと現代の医学では、体内からHIVウイルスを完全に除去し完治させることは難しい病気です。

HIVの治療方法に用いられるのが、抗HIV薬を使用してウイルスの増殖を抑えるという治療法ですが、
近年ではHIV感染症に対する薬剤も進化しているので、適切な薬剤の服用を続けていれば、症状を発症させず、病気と付き合うことも可能となっています。

治らない病気からうまく付き合える病気へ

HIVの治療には、ARTと呼ばれる治療法が多く使用されています。これは、薬物抗体ができやすいHIVウイルスに対抗して、数種類の抗HIV薬を同時に服用することで、薬物抗体をつけにくくするという治療法となります。

かつては恐れられていた梅毒は完治させることができるようになり、過去にはさまざまな理由や誤解があったHIVも現代医学によって症状を抑えながら長期間、一般生活を営めるようになりました。

医師と二人三脚で病気への対応をしていきましょう。

梅毒の概要

梅毒の症状について簡単にご説明します。梅毒は病期と呼ばれる4つの段階を経て進行し、男女ともに同じような症状が発生します。

第1期梅毒

感染から3週間目より3カ月程度の間、第1期と呼ばれる病期が続きます。
第1期は基本的に性器周辺などの感染部位にしこりなどの症状が発生するか、目立った症状が出ないまま進行します。

第2期梅毒

感染から3カ月後に第2期に移行し、症状が全身に現れるようになります。主な症状はバラ疹や丘疹などと呼ばれる発疹ですが、この症状は一定期間現れたのちに治まってしまいます。症状が治まると、一度潜伏期間というものが始まり目立った症状が無くなります。潜伏期間は3年後の第3期に移行するまで続くので、ここで完治したと勘違いしてしまう人も少なくありません。

晩期梅毒

3年後から始まる第3期や第4期になると、身体にゴムのような腫瘍が発生したり、心臓血管や中枢神経まで梅毒が感染を広げ、痴呆や麻痺などの重い症状をもたらします。

医学が発達して治療法が確立されてからは、この第3期や4期まで症状が悪化するケースは極めて稀だとされていますが、悪化すると命にかかわる重篤な病気となるため、早めの治療を心がけましょう。

HIVの概要

HIVはヒト免疫不全ウイルスと呼ばれるウイルスで、これに感染すると身体の免疫が徐々に低下し、様々なウイルス・菌によって感染症を引き起こすようになってしまいます。

HIVの感染初期

HIVに感染すると感染2週間~約8週間の間に初期症状が発生します。
この初期症状は、発熱や咳・喉の痛み、リンパ節の腫れなど風邪によく似た症状が多く、HIVに感染したことに気付かないというケースもあります。

しかし、全く症状が出ないという人も中には存在します。

HIVの初期症状は約2週間続くことが一般的ですが、その後、症状が全くなくなる無症状期間に突入します。無症候期間は、HIVが治ったわけではなく体内で免疫を破壊し続けているのです。

後天性免疫不全症候群

そのまま免疫が破壊されつづけると約2年~10年後に、「後天性免疫不全症候群」が発症します。
これは身体の免疫が機能しなくなり、本来の健康的な人ならうつるはずのない様々な病期に感染するようになる病期です。

HIVとエイズは同じなのか、違うのかという話を耳にしますが、
エイズとは、この「後天性免疫不全症候群」のことを指し、HIVに感染し免疫力が機能しなくなることで発症する病気のことを指します。

両方の病気がどのように影響しあうのか

梅毒とHIVは重複感染しやすいだけではなく、重複感染していることで病期の進行や治療などに悪影響を与えることがあります。

HIVに感染していると「神経梅毒」に移行しやすい

まず、梅毒には感染後、数年から数十年を経て発症する神経梅毒という症状があります。

神経梅毒は、梅毒トレポネーマが中枢神経まで感染を広げることで起こる症状で、認知障害、記憶障害などの脳障害が発症する、歩行や感覚に障害が出たりするなど、日常生活に支障をきたすようになる状態です。

本来、感染から長期間経たなければ発生しない症状なのですが、HIVに重複感染していると、この神経梅毒への移行が早い時期に起こってしまう確立が高まります。

HIVに感染していると梅毒の第2期に起こる皮膚病変が悪化することがある

梅毒の第2期に現れるバラ疹などの症状も、HIVに感染していると通常よりも悪化してしまう可能性があります。

第2期の皮膚病変は本来であれば、あまり発疹の痕も残らずに治る症状なのにもかかわらず、HIVに感染していると大きなかさぶたになったり、ただれて組織が破壊されてしまったり、重い皮膚病変が発症することもあります。

まとめ

HIVと梅毒に重複感染してしまうと、通常の感染よりも症状が悪化しやすくなり、命に関わる問題が発生することがあります。

梅毒とHIVどちらの病気も早期発見と早期治療が身体への影響を最低限に留める大切なポイントです。

HIVは完治こそしませんが、早期検査・早期発見によって症状を和らげ、病気とうまく付き合って行ける治療法が確立しています。梅毒は早めの治療を行えば、身体の中から梅毒トレポネーマを無くし、完治させることも可能になっています。

感染の心当たりがある方や不安に思う方は、病院やクリニックなどの医療機関、保健所などで性病検査を受け、早めに治療法に結びつけるようにしてくださいね。

まずは専門医に相談を

新宿駅前クリニックでは、皮膚科・内科・耳鼻科・泌尿器科を併設しており、平日夜19時まで診療を行っている専門の医療機関です。

メディア・記事の監修ドクター:新宿駅前クリニック院長 蓮池林太郎